• 高澤 未樹
    入社後5年間は購買課に所属。チョコレートや紅茶の資材調達を担当した。その後、本社営業本部に異動し、東京都内のスーパーマーケットやコンビニエンスストアを対象に、営業として勤務。商品開発課を経て2013年3月に現部署へと異動。翌2014年から「辻利」のブランドマネジメント担当となり、商品や店舗を通じた情報発信などに従事している。
  • 平岡 雅浩
    2年間の本社営業本部勤務、1年間の関東営業所勤務を経て、2007年3月からマーケティング本部に所属。「モンカフェ」「アストリア」など、コーヒー関連の商品開発を7年間担当した。2014年3月からは「辻利」「バンホーテン」の商品開発担当として勤務している。今回は、「辻利」の三角バッグ開発の経緯について語ってもらった。
  • 伊藤 将弥
    入社以来、東京を皮切りに、名古屋、仙台で営業担当として勤務。さまざまな販売ルートでの営業活動を経験した。2014年3月に、現部署へと異動。「スティッククラブ」をはじめ、辻利京都店で販売する土産商品など、「辻利」商品のバリエーション展開に従事してきた。2015年4月からは、「辻利」ブランドのアイスクリームやチョコレートの商品開発を担当している。
  • 吉川 奈由太
    大学卒業後は海運関連のシステム会社に就職し8年間、ITサポート担当として勤務していた。独自のこだわりでビジネス展開している片岡物産の事業に魅力と可能性を感じ、2014年3月に入社、現部署に配属された。同年9月からは、「辻利」の三角バッグやインスタント商品の担当となり、資材調達に従事している。

伝統と革新によって育まれてきた日本茶ブランド

辻利とは、萬延元年(1860年)に京都・宇治で創業したお茶の老舗だ。宇治といえば日本茶の産地として高名だが、辻利は、宇治の茶園で栽培される品質の高い茶葉を厳選する、茶匠の技術に定評がある。素材だけでなく、石臼挽きに代表される昔ながらの製法にもこだわり、香り豊かで良質な日本茶を世に送り出し続けている。また、創業者の辻利右衛門は、保存性の高い茶櫃を考案することで傷みやすい日本茶の販路を拡大し、玉露の茶葉を針状の美しい鮮緑に仕上げる「玉露製法」を確立させたことでも広く知られる。歴史に裏打ちされた確かな品質や、代々受け継がれている改革者気風に着目した片岡物産では、1985年から業務提携を開始。商社としての機能とメーカーとしての機能をフルに活かし、インスタント飲料やティーバッグをはじめ、菓子やアイスクリームなど、新たなジャンルの商品開発も積極展開してきた。伝統を守る一方、時代にフィットした新たな楽しみ方も世に提供し続けることで、国内はもちろん、海外にも誇れるブランドへと成長してきた辻利。ここでは、さまざまな角度から辻利に関わっている4人の社員を通じて、その魅力や可能性について紹介していきたい。
伝統と革新こそが辻利のブランド力その特徴を、店舗を通じて強力に発信

高澤が『辻利』のブランドマネジメント担当に就任した時点で、片岡物産では約30年もの長きにわたって『辻利』を扱ってきていた。日本茶のブランドであることは世間でも広く認知されていたわけだ。さらなる飛躍を目指すために高澤が取り組んだのが、アンテナショップの出店だ。
「お茶自体が日本人の生活に広く浸透していることもあり、『辻利』の品質の良さを伝えるだけでは発信力が弱いですよね。そこで、“抹茶の新感覚体験”をキーワードに、従来にない日本茶の新たな楽しみ方を体験できるカフェにしようと考えたのです。店舗デザイナーとは幾度も協議を重ね、瀟洒でありながら伝統の重みも感じられるような店構えを目指しました。また、お茶以外のメニューをラインナップに加えるため、抹茶のラテやスムージー、ソフトクリームなどを新規に開発。敢えて急須を使わない淹れ方を採用したこともあり、立案当初は疑問の声も出ました。しかし、辻利には、伝統の継承に固執するのではなく、果敢なチャレンジで道を切り拓いてきたという歴史があります。日本茶離れが進んでいる若い世代に魅力を知ってもらうことの意義を粘り強く説明することで、理解が得られました」
かくして、2014年9月に「辻利 京都店」がオープン。狙い通り、型にとらわれない抹茶の楽しみ方が話題を呼び、開店以来、多くの人が訪れる新名所となっている。しかし、結果を出した当の高澤は、走り続けている。
「店舗出店という新しい取り組み以外にも、辻利は現在アイスクリーム、チョコレートといった新たな商品展開にも力を入れています。また、抹茶は近年海外でも注目度が上がっている商材であるため、海外での販路開拓にも取り組んでいるところです。ぜひ成功させて、新たな可能性を広げたいですね。『辻利』であれば、十分実現可能だと思っています」


“抹茶の新感覚体験”をテーマとしたこだわりの抹茶メニュー
幅広い「辻利」のお茶の存在と魅力を広めたい狙うは、原点回帰と既成概念の打破

平岡が商品開発担当になった2014年3月の時点で、『辻利』はさまざまな形で商品化されていた。社外食品メーカーのライセンス契約商品も合わせれば、そのラインナップは相当な数にのぼる。
「インスタント商品やペットボトル飲料、和菓子、アイスクリームなど、味も商品形態も多様で、『辻利』は、抹茶ブランドとして既に広く認知されていました。こうした状況下で新商品を開発するにあたり、焦点を当てたのが原点回帰です。煎茶や玄米茶といったお茶本来の飲み方を通じ、『辻利』が扱う宇治のお茶の魅力をもっとたくさんの方に知ってもらおうと考えたわけです」
開発に先んじたマーケティング調査の結果で、平岡が特に注目したのが“急須で淹れるのは面倒だが、ティーバッグの日本茶にはおいしいものがない”という声が多いことだった。
「片岡物産には、紅茶の『トワイニング』などを通じて、既にティーバックに関する高度な技術が蓄積されています。私たちならティーバッグでも、『辻利』本来の味わいを再現できると確信しました。ただ社内では、せっかく抹茶ブランドとして浸透しているのに、煎茶や玄米茶などのお茶を商品化するのは逆効果ではという声も上がりましたが、三角バッグの開発に踏み切りました。開発にあたっては、『辻利』最大の特徴である、香ばしさと渋み、甘みの絶妙なバランスを再現することに細心の注意を払いました」 新商品は2015年秋に発売され、市場では着実な反響が出ている。平岡は言う。
「三角バッグの商品群が、『辻利』を抹茶ブランドから日本茶の総合ブランドとして再認識していただくきっかけになればと思っています」


手軽においしく味わえる
三角バッグシリーズ
抹茶の特性に最新の注意を払いながら「辻利」の名にふさわしい商品を生み出す フラワーブーケ」

『辻利』ブランドでバレンタイン向けの商品を開発してほしい――マーケティング部から寄せられたこんなリクエストに対応することになったのが伊藤だ。関係者と協議を重ねた結果、メインの開発商品は、抹茶フレーバーのボンボンショコラとガトーショコラに決まった。
「試作品の開発は社内のレシピ考案担当者が担当しましたが、とてもクオリティの高いものをつくってくれました。私が担ったのは、品質を落とさずに量産体制を整備することです。最大のハードルだったのが、劣化しやすいという抹茶の特性です。抹茶は、光が当たったり、温度が一定以上になったりすると、すぐに色あせてしまうんですね。工場には、できるだけ光を照射せずに済むように製造ラインの調整を検討してもらい、物流会社には、配送過程での温度管理を徹底してもらうよう依頼するなど、さまざまな配慮が必要でした。また、片岡物産では、さまざまなチョコレート商品を扱ってきた経験がありますが、すべて海外ブランド。セルフプロデュースで自社生産するのは初の試みだったのです。幾度も工場に足を運び、味や見た目をチェックしては工程を再調整するという思考錯誤を繰り返しました。多くの関係者に苦労をかけたぶん、最終的には『辻利』ブランド商品に求められる完成度で世に送り出せるようになったと自負しています」
『辻利』は、今や片岡物産の中核を担うブランドのひとつとなっている。このため、商品開発担当にはブランドイメージを損なうわけにいかないという多大なプレッシャーがかかるのだ。
「半面、片岡物産の躍進のカギを握るという使命感を抱けます。また、他の主力商品はすべて海外ブランドですが、『辻利』に関しては、当社がブランドホルダー。バレンタイン向けの商品のように、主体性をもって開発できるのです。このアドバンテージを活かして、さらに成長発展させていきたいですね」


山椒、胡麻、ゆずなどこだわりの素材との調和を愉しむボンボンショコラ
販売が始まりあらためて知ったパーソナルギフト市場の幅広さ

吉川は、三角バッグやインスタント商品に使われる資材の調達や、製造を委託している協力工場との折衝などを担当している。
「『辻利』商品の多くは、賞味期限が短い傾向にあります。つまり、作り置きができず、売れ残りが出ると無駄になってしまうということです。多品種少量生産を安定的かつ低コストで持続できる体制を整え、消費者のみなさんが欲したときに、確実に価値の高い商品を届けられるようにすることが、私たちのミッション。優れた加工技術を有した工場を探して賞味期限を延ばしたり、より生産効率の高い梱包材メーカーを探して発注から納品までの期間を短縮したりと、さまざまな点に配慮しています。また、最新情報にアンテナを張っておき、低コスト化や短納期化を実現できる技術・製品が出た際には、社内の関係部署にフィードバックして見直しを促すこともありますし、工場に足を運んで効率化できる余地がないかチェックすることもあります。現状に満足せず、常に改善点を追求する意識の高さが求められますね」
他社での勤務経験がある吉川にとって驚きだったのが、どの社員にも、良いものを世に送り出そうとする姿勢が備わっていることだという。
「誰もが商品や消費者に対してすごく真摯です。このため、自然とモチベーションが上がり、生産管理部として後押ししたいという気持ちになるんですよ。これまでの『辻利』は、抹茶ミルクや抹茶を使用したお菓子を通じて認知度を高めてきたという印象があります。しかし、自分が三角バッグやインスタント商品を担当しているからには、改めてお茶としての本質でお客様を魅了できるよう、品質を向上させていきたいと思っています」


茶葉が大きな三角空間にゆったりと広がることで、香り高くまろみのある味わいに